研修で「AIに任せる前に基準を決めましょう」と話すと、「基準とは何を書けばよいのですか」と聞かれます。基準とは、AIの仕事の出来を「これでよい」と言ってよい線のことで、この記事は、人が決める基準を3つ書き出す方法を、研修でどう教えるかに答えます。
答えは、受講者に紙を1枚渡し、自分の仕事を1つ選ばせて、数字か言葉で言い切れる基準を3つ書かせることです。弊社の1on1型短期集中研修は、5名まで、専属講師が1対1で、期間は2か月(税抜120万円〜は参考価格)という形で、受講者本人の仕事を題材にして基準を一緒に書けます。
基準を人が先に決める理由
AIに文章や数字を点検させる場面があります。点検するAIは、何を合格とするかを自分では知りません。
ある記事では、割引率の上限を30%にするか40%にするかは経営の判断だと書かれていました。人が決めて文章にして、はじめて検査の対象になる、という話です。上限が決まっていなければ、AIは30%にも40%にも合否を言えません。
会社にこの判断が要る理由は、基準が無いまま通った結果について、あとで誰も説明できなくなるからです。研修では、まずこの話を受講者に伝えます。
書かせる基準の種類
3つの基準は、種類を分けて書かせると迷いません。次の表のように、種類ごとに1つずつ決めます。例は研修用に作った作り話です。
| 種類 | 例(見積書の下書きの場合) | 決める人 |
|---|---|---|
| 数字の線 | 値引きは定価の何%までかを1つの数字で書く | 部署の責任者 |
| 言葉の線 | お客様の名前と宛先の会社名が、依頼書と同じである | 仕事の担当者 |
| 止める線 | 線を超えたら、AIは出さずに人へ戻す | 部署の責任者 |
数字の線は、割引率のように1つの値で言い切れるものです。言葉の線は、読んで合っているかが分かるものです。止める線は、超えたときにAIがどうするかを決めます。
研修での進め方
進め方は次の4段です。
- 受講者が、AIによく頼む仕事を1つ選ぶ
- その仕事で、直前に人が見ている点を思い出して書き出す
- 書き出した点を、数字の線、言葉の線、止める線に仕分ける
- 各種類から1つずつ残し、全部で3つにする
2の段が、研修で一番時間がかかります。人は無意識に見ている点を、言葉にするのが苦手だからです。講師は「その資料を見て、直したくなる所はどこですか」と聞いて引き出します。
3つに絞るのは、多いと守られなくなるからです。減らした分は、人が見る範囲に回します。
書いた基準を確かめる
書けたら、隣の人と紙を交換します。相手がその基準だけを読んで、同じ文章を見たときに、自分と同じ合否になるかを試します。合否が割れたら、その基準はまだ曖昧です。
曖昧な基準の直し方は、「気をつけて」を確認できる行に直す(新しいタブで開きます)に詳しく書きました。「丁寧に」を「敬語の間違いが無い」に変える作業と同じです。
研修でつまずきやすい所
受講者が最初に書く基準は、「正確であること」のような広い言葉になりがちです。これでは、隣の人が読んでも合否を決められません。
講師は「その言葉を、数字か見て分かる点に言い換えてください」と返します。「正確」の例では、宛先の会社名が依頼書と同じか、金額の合計が合っているかが言い換えの答えです。言い換えを2回ほど繰り返すと、受講者は自分で直せるようになります。
通っても人が見る点
基準を通ったことは、仕事の目的に合うこととは別です。割引率が上限に収まっていても、その取引をしてよいかは、人が見ないと分かりません。
研修では、3つの基準の下に「基準を通ったあとに人が見ること」を1行足させます。AIに任せる範囲を紙に書く方法は、AIに出す許可を紙1枚で決める(新しいタブで開きます)の記事とつなげて教えられます。
明日できる次の一手
明日、自分の部署でAIに頼んでいる仕事を1つ選んでください。その仕事の基準を、付箋に3つ書きます。書いたら、同じ仕事を知っている同僚に見せ、同じ合否になるかを確かめます。
このとき、話し合ってから決める点が残ります。たとえば、費用の上限をいくらにするか、公開前に誰の承認を取るかです。これらは仕事ごとに答えが違うので、研修でも答えを教えません。受講者の部署で話し合って決めてもらいます。
2026年10月時点の弊社の整理では、基準を3つ書く作業は、AIの使い方を教える前に置くのが合っています。基準が先にあれば、AIが出した結果を見る目が、受講者の側にそろうからです。