「専門家のつもりで答えて」とAIに頼んだのに、返ってきた答えが普通の文章と変わらなかった。研修でそんな声を聞くことがあります。この記事は、AIに専門家らしく答えさせるために、道具や手法を指定する方法を研修でどう教えるかを書きます。
答えは、専門家の名前ではなく、その分野の専門家が使う道具や手法の名前を伝えると教えることです。生成AIの研修サービス Qu では、頼む前に「この分野の一流の人は、何を使って調べるか」を書き出す練習から始めます。2026年10月時点の弊社の考え方です。
役を指定しても変わるもの
「あなたは統計の専門家です」と頼むと、AIの言葉づかいはていねいで専門的になります。ところが、中身の作り方は変わりません。数字を表に並べて、感想を添えて終わることが多いのです。
専門家の価値は、言葉づかいにはありません。どの道具を使い、どの順に確かめるかにあります。研修では最初に、この違いを受講者に見せます。
道具や手法の名前で頼む
同じ売上のデータでも、頼み方で返ってくるものが変わります。研修で並べて見せる例は、次のとおりです。
| 頼み方 | 返ってくるもの |
|---|---|
| 統計の専門家として売上を分析して | 平均や増減の説明。表と感想で終わりやすい |
| 売上の表を、統計の手法で調べて。ばらつきと、前の月との差が偶然ではないかも見て | 手法を使った計算と、その結果の読み方 |
下の頼み方では、AIが使う手法が決まっています。手法が決まると、確かめる点も決まります。
なお、表で整理させる頼み方はAIに調べものを頼むときは、先に表を作らせると研修で教える(新しいタブで開きます)で書きました。今回は、その表のあとに何をさせるかの話です。
研修の場では、受講者に両方の答えを声に出して読んでもらうと、上の答えは分かった気になるだけで、次に何をすればよいかが残らないと気づきます。下の答えは、計算の結果があるので、数字を自分の目で確かめられます。
研修で教える手順
受講者には、次の順に書かせます。自分の仕事で1つ選んでもらいます。
- 頼みたい仕事を一文で書く。たとえば「先月の問い合わせを分類する」
- その仕事を、その道の一流の人がやるなら、何を使うかを調べる。調べ方は本やサイトで構わない
- 道具や手法の名前を、頼み文に書き入れる その後、名前の意味が分からないときは、AIに「この手法は何をするものか」を先に聞きます。返ってきた結果が、その手法の手順どおりかも見ます。
意味を確かめる手順が大切です。自分が意味を分からない名前を指定すると、AIの答えが正しいか判断できません。名前を書くことと、意味を知ることは、同じ手順に入れて教えます。
弊社が決めていること
弊社は、記事に成果の数字を入れないと決めています。確かめられる事実だけを書くためです。
この決まりも、道具を指定する考え方と同じです。「いい記事にして」ではなく、「料金、プランの中身、期間、人数、運用ルールだけを使って書く」と、使ってよい材料を名前で渡します。材料を決めると、AIは足りない数字を作れなくなります。
AIの答えを分かりやすくする頼み方は、大事な点と理由を先に書かせると教える(新しいタブで開きます)の頼み方と組み合わせると、答えの形も整います。
会社にこの教え方が要る理由
役を指定するだけの頼み方では、答えの見た目だけが専門家らしくなります。見た目が整うと、読む人は中身も確かだと思いやすくなります。会社の判断や、お客様に出す文書では、これは困ったことです。
道具や手法を指定すると、確かめる場所が見えます。どの手法を使ったかが分かれば、別の人がその手順を追って確かめられ、担当者が替わっても同じ頼み方を引き継げます。
道具の名前を調べる手間は、最初だけかかります。仕事の種類ごとに名前を控えておけば、次からは書き写すだけで済み、2回目からは前の頼み文を使い回せます。
明日できる一手
明日、いつもAIに頼んでいる仕事を1つ選んでください。頼み文の中の「専門家として」を消し、代わりにその分野の道具や手法の名前を1つ書き入れます。
そのうえで、前の答えと並べて読み比べます。違いが分かったら、その頼み文を部署の共有の場所に1つ保存します。
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