月次の資料づくりをAIに任せていた担当者が、異動しました。翌月、後任の人が同じAIで作ると、仕上がりが前と違います。使ったAIは同じなのに、なぜ結果が変わるのでしょうか。この記事は、担当が替わっても同じ結果が出るように、手順書の残し方を研修でどう教えるかに答えます。
答えは、手順書を「次の担当が読んで、聞かずに動かせるか」で完成とみなして教えることです。生成AI研修では、設定を1か所に集める課題、最初の手順を書く課題、新しい人に実際に試してもらう課題を、ひとまとまりで行います。2026年10月時点で、Qu(弊社の生成AI研修)はこの順で進めています。書いて終わりにせず、他の人が動かすところまでを課題に入れるのが要点です。
結果が変わる原因
担当が替わると結果が変わるのは、AIの出来が悪いからではありません。前の担当者の頭の中にしかない情報が、引き継がれていないからです。
研修では、次の4つを受講者に探させます。
- 指示の文面
- 前の担当者のチャットの履歴にしか残っていない
- 設定
- 画面の設定、共有の範囲、使うアカウントが、人によって別々に置かれている
- 暗黙の判断
- 「この数字は必ず確かめる」のような癖が、どこにも書かれていない
- 最初の一歩
- どのファイルを開き、何から頼むかが書かれていない
自分の仕事でこの4つが見つかれば、それが手順書に書くべき中身です。
手順書に入れる項目
手順書は長くしません。次の4項目を、1枚にまとめるよう教えます。
| 項目 | 書くこと | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 目的と出来上がり | 何のための仕事か。何ができたら終わりか | 新しい人が1文で言い直せる |
| 設定の置き場 | 使うAI、アカウント、共有の範囲を書いた場所 | 設定が1か所だけにある |
| 最初の手順 | 開くファイルと、最初にAIへ頼む文 | その文をそのまま貼れば動く |
| 人が確かめる点 | 出す前に人が見る場所と、見る人 | 見る人の名前か役割がある |
AIに読ませる細かい手順は、別のファイルに分けます。分け方はAI向けの手順書は、1ファイル1つの考え方に分けて教える(新しいタブで開きます)で説明しています。上の1枚は、人が最初に読む入口の役目です。
研修での進め方
研修は、次の順に進めます。1つの課題を1人が自分の仕事から選びます。
- 自分が普段AIに任せている仕事を1つ選ぶ
- 上の4つの原因を、その仕事で探して書き出す
- 設定を1か所に集め、置き場を決める
- 最初の手順を、頼む文も含めて書く
- 隣の席の人に手順書だけを渡す
- 渡された人は、質問せずに動かしてみる
- 止まった箇所に印を付け、書いた人が直す
5番から7番が、この研修の中心です。書いた本人は、自分の手順書の抜けに気づけません。他の人が止まった場所で、はじめて抜けが見えます。
弊社の運用を例にする
研修の例として、弊社が実際に決めている運用を見せます。弊社は、外部へ出る文を、出す前に機械の判定(Jev)で点検しています。Jevは、会社として出してよい文かを見る機械の判定です。あわせて、公開前に人間が読んで分かる言葉かを確かめます。比喩を使わないこと、専門語は初めて出るところで説明することが、その確認の中身です。
この点検は、誰が記事を書いても同じ手順で動きます。だから担当が替わっても、出す前の確認は変わりません。受講者には、自分の仕事にも「誰がやっても同じになる確認」を1つ置くよう勧めます。
弊社が研修で扱うのは、この考え方です。弊社の仕組みを真似ることではなく、自社の確認を手順に書くことを目指します。
会社に必要な理由
手順書が人の頭の中にあると、担当が替わるたびに、仕事を作り直すことになります。その間、仕事は止まるか、前と違う仕上がりで出ます。違いに気づく人がいなければ、お客様に届く文章の質が、知らないうちに変わります。
AIで自動化した仕事は、作った人の気分が上がる出来事で終わることがあります。会社の財産になるのは、他の人が引き継いで、同じように動かせるものです。そのため、手順書を残す練習は、個人のためではなく会社のために行います。
なお、複数の人が毎週同じ仕事を試す形で練習したい場合は、1社毎週定例の形でも行えます。内容は会社の仕事に合わせて決めます。
明日できる次の一手
明日の朝、AIに任せている仕事を1つ選びます。上の4項目を書き出します。書けなかった項目が、いまの抜けです。
そのあと、同じ部署の人に手順書だけを渡し、質問なしで動かしてもらいます。止まった箇所に印を付けて、書き足します。これだけで、担当が替わっても止まらない状態に近づきます。
確かめる力の教え方に興味があれば、AIで作った業務アプリは、別の人が確かめる決まりから教える(新しいタブで開きます)もあわせて読んでください。