社員がAIで業務アプリを作ると、次に「できたので、みんなで使ってもいいですか」という声が現場から上がります。そのとき、誰が何を見て「いいですよ」と言うのかを決めていないと、答えに困ります。この記事は、AIで作った業務アプリを誰がどう確かめるかを、研修でどう教えるかに答える内容です。読むのは、研修を考える人事の方と経営者の方を想定しています。
弊社が研修で最初に教えるのは、公開の前に、作った本人とは別の人が必ず確かめるという決まりです。AIが作ったアプリには、弱点が残りやすいからです。この確かめる作業を、ここでは「レビュー」と呼びます。作った人以外が中身を読んで、問題がないかを調べることです。Qu の研修でも、道具の使い方より先にこの決まりを置きます。以下は、2026年10月時点の弊社の考え方です。
なぜ別の人が見るのか
作った本人は、動くことを確かめたところで安心します。ボタンを押して画面が出れば、完成に見えるからです。
一方で、AIが作ったアプリには、動くのに安全ではない部分が残ることがあります。この安全面の弱いところが「脆弱性」です。悪意のある人や、操作を間違えた人に突かれて、情報が漏れたり、データがおかしくなったりする原因になります。
作った本人は、自分の作ったものの弱点に気づきにくいものです。別の人の目が入ると、気づく場所が増えます。研修では、この理由を最初に話します。決まりの理由が分かれば、現場は「面倒な手続き」とは受け取りません。
作る人が一言添える
確かめる前に、作る側でできることもあります。AIに依頼するときに「本番で使える水準で作ってください」と一言添えることです。これだけで、弱点は減ります。
ただし、ゼロにはなりません。研修では、この両方を同じ場面で伝えます。
- 一言添えると
- 弱点は減る
- 添えても
- 弱点は残る
- だから別の人が確かめる
「添えたから大丈夫」と受け取られると、レビューが省かれます。減ることと、なくならないことを、必ず並べて教えます。
確かめる人が見る点
確かめる人は、専門家である必要はありません。見る点を決めた表があれば、社内の人でも始められます。研修では、次の表を配って、その場で使わせます。
| 見る点 | 見る理由 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 誰が開けるか | ログインなしで開ける状態だと、社外の人にも見える | 別のブラウザで、ログインせずに開いてみる |
| 個人情報を保存していないか | お客様や社員の情報は、保存先と見られる人を決めないと扱えない | 入力欄と保存されるデータを一覧にする |
| 想定外の入力 | 空欄や長すぎる文字で止まったり、壊れたりすることがある | 空欄、とても長い文字、記号を入れてみる |
| パスワードや API キー | API キーは、外部のサービスを使うための長い文字列で、漏れると他人に使われる | 画面や作業記録に書き込まれていないかを探す |
| 直す人 | 作った人が異動すると、誰も直せなくなる | 担当者名と連絡先を台帳に書く |
表の右の列は、専門知識がなくても実行できる操作にしてあります。確かめる人に求めるのは、操作して、気づいたことを書くところまでです。
研修での練習の進め方
読むだけでは身につかないので、研修では、実際に確かめる練習をします。進め方は次のとおりです。
- 参加者が、AIで小さな業務アプリを1つ作る
- 例として、問い合わせの受付表や、備品の貸出表を使う
- 作った人が、AIへの依頼文を確かめる人に渡す
- 「本番で使える水準で」と添えたかも、このとき見せる
- 確かめる人が、上の表で見る点を1つずつ調べる
- 気づいたことは、そのまま文章で書く
- 作った人が、指摘を受けて直す
- 直す作業も、AIに頼んでよい
- 直したあとに、確かめる人がもう一度見る
最後の「もう一度見る」を省かないことが大切です。直した部分が正しくても、別の場所に影響が出ていないかは、見ないと分からないからです。
確かめた記録を残す
レビューが済んだら、誰が、いつ、何を確かめたかを1行で残します。台帳は表計算の1枚で足ります。
- 残す項目
- アプリの名前
- 作った人
- 確かめた人
- 確かめた日
- 直した点
記録があると、あとで問題が起きたときに、どこまで確かめたかが分かります。弊社も、やったことを記録に残して、次の仕事の材料にしています。研修の最後には、この台帳を自社の形に直して持ち帰ってもらう流れです。
研修を開く前に決めること
研修の前に、確かめる人を誰にするかを会社で決めておきます。最初は、情報システムの担当者か、アプリを作っていない部署の人が適任です。担当者がいない会社でも、作った人以外の1人を決めれば始められます。
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確かめる決まりは、情報の扱いの決まりとつなげると定着します。情報の区分と設定の教え方は、情報漏えいを防ぐ生成AI研修は、区分と設定と連絡先を教える(新しいタブで開きます)にまとめました。アプリを作る研修の前に読んでおくと、確かめる点を決めやすくなります。