部下が出した目標には数字が入っています。けれども、その数字が何のためなのかを、上司も本人も説明できないことがあります。そこで使えるのが「その数字が達成されたら、誰の何が変わるのですか」という聞き返しです。この記事は、これを研修でどう教えるかに答えます。
答えは、聞き返し方を覚えさせるだけで終わらせないことです。上司役と部下役に分かれ、実際の目標を使って、変わる人と変わる中身を一文で言う練習をします。聞く側と答える側の両方を経験させると、現場で使えるようになります。
聞き返しが目標に効く理由
1人で考えた目標は、やり方の話に偏りやすくなります。ある記事では、筆者が広い視点を持つ人に自分の考えを見せました。返ってきたのは答えではなく、この聞き返しだったと書かれています。
数字は、状態を表すだけです。誰が楽になるのか、誰の仕事が減るのかは、数字の中にありません。そのため、数字を達成しても、誰にも変化がないことが起こります。
会社にとっては、これは時間の使い方の問題です。変化の先が分からない目標に人の時間を使うと、仕事だけが増えます。上司が答えを与える代わりに聞き返すと、部下が自分で目的を言葉にします。
研修の最初に伝えること
最初に、聞き返しは採点ではないと伝えます。詰問に聞こえれば、部下は数字を守る説明を始めてしまうからです。上司は答えを知っていて聞くのではなく、知りたくて聞く、と受講者に確かめます。
あわせて、答えられなくてよいことも伝えます。「まだ分かりません」も、目標を見直す入口です。答えられないことを責めない場だと、研修の中で先に決めます。
研修での進め方
- 受講者が、自分の部下の目標を1つ持ってきます。個人が分かる情報は伏せます
- 目標の文の中で、数字の部分に線を引きます
- 上司役が「その数字が達成されたら、誰の何が変わるのですか」と聞きます
- 部下役は、「誰の」「何が」を一文で答えます
- 出た答えを、目標の文に書き足します
役を入れ替えて、もう一度行います。聞かれる側を経験した人は、聞くときの言い方がやわらかくなります。
弊社の1on1型短期集中研修は、5名までの受講者に専属講師が1対1で向き合う形です。この練習は受講者本人の実際の目標を使うので、その形と合わせやすいです。参考価格は人材育成の項で別に案内しています。
上司役に教える聞き方
聞き返しは、一度で終わらせません。最初の答えが短くても、上司はそこで止めず、次の一言を足します。足す言葉は「たとえばどんな場面ですか」くらいで十分です。
声の調子も練習に入れます。同じ言葉でも、腕を組んで聞くと答えにくいものです。目標の紙を一緒に見ながら聞くと、答えやすくなります。研修では、受講者同士で聞き方を見合い、答えにくかった点を伝え合います。
答えの見分け方
答えが出たあとに、その答えが具体的かを見ます。たとえば次のように分けて教えます。
| 部下の答え | 見立て | 次の一言 |
|---|---|---|
| 売上が上がります | 誰の何かが分からない | どの部署の、どの仕事が変わりますか |
| みんなが助かります | 範囲が広すぎる | いちばん助かる1人は誰ですか |
| 受付の人の確認作業が減ります | 誰の何かが言えている | 減った分は何に使いますか |
数字を複数にして組で渡す考え方は、AIに渡す目標は数字を1つにせず組にする。研修での教え方と手順(新しいタブで開きます)でも書いています。
明日できる次の一手
明日、部下の目標を1つ選んで数字の部分に印をつけ、その部下との面談で聞き返しを1回だけ言います。答えが出なくても、その場で正解を言わず、「次の面談までに考えてみてください」と返します。
仕事を任せる伝え方と合わせて教えたい場合は、部下に仕事を任せる伝え方は、期待の理由と最初の小さな仕事から教える(新しいタブで開きます)も参考になります。
広げる前に確かめること
この聞き返しの考え方は、ある記事の筆者一人の経験にもとづきます。他の会社の目標づくりに当てはまるかは、分かりません。2026年10月時点では、全社の研修に入れる前に、まず1つのチームで試すのが安全です。
試したら、部下が目標の文に「誰の何が変わるか」を書けるようになったかを見ます。書けるようになったなら次のチームに広げ、書けないなら聞き方か目標の持ってき方を見直します。