AIに「この数字を上げてください」と頼むと、数字は上がります。それなのに、仕事の出来が下がることがあります。研修で受講者から「目標はどう書けばよいですか」と聞かれる場面です。この記事は、目標の数字を1つだけにしない考え方を、研修でどう教えるかに答えます。
Qu の研修では、目標を必ず2つ以上の数字の組にして渡すと教えます。1つ目は上げたい数字です。2つ目は、1つ目を無理に上げたときに下がりやすい数字です。この2つを同じ文に書いてAIに渡します。2026年10月時点の、弊社の教え方です。
数字が1つだと起きること
AIは、渡された数字を上げる方法を選びます。その数字を上げる近道があれば、近道を使います。人が望む本当の成果と数字がずれていても同じです。
例として、問い合わせの解決率だけを目標にしたとします。AIは「速く閉じる」ことを覚えます。お客様の話を最後まで聞かずに、解決済みにするかもしれません。解決率は上がります。しかしお客様の満足度は下がります。
これは考え方の例であり、弊社の実績ではありません。ただ、数字が1つだと起こり得る形として、研修ではこの例を最初に見せます。
組にする数字の選び方
組にする数字は、次の問いで選びます。「1つ目の数字を、手を抜いて上げるとしたら、どこで手を抜くか」。手を抜く場所が分かれば、そこを測る数字が2つ目になります。
| 上げたい数字 | AIが選びかねない近道 | 組にする数字 |
|---|---|---|
| 問い合わせの解決率 | 話を聞かずに速く閉じる | お客様の満足度 |
| 返信までの速さ | 中身の薄い返事を急いで出す | 同じ件での再問い合わせの数 |
| 作った文書の数 | 読まれない文書を増やす | 読んだ人の評価 |
表の右の列は、左の数字だけを見ていると気づけない部分です。受講者には、自分の仕事の数字で同じ表を作ってもらいます。
研修で進める手順
研修では、次の順番で受講者に作業をしてもらいます。
- 自分の仕事で、AIに任せたい作業を1つ選びます
- その作業の目標を、今使っている数字で1つ書きます
- 「この数字を手を抜いて上げるなら、どうするか」を3分で書き出します
- 手を抜いたときに下がる数字を探し、組にします
- 2つの数字を1つの文にして、AIへの指示に入れます
3の作業が大事です。AIの立場になって考えると、近道が見えるからです。人が自分の数字を上げるときの癖を思い出す受講者もよくいます。
指示の文にどう書くか
組にした数字は、優先の順番も添えて書きます。たとえば次のように書きます。
「解決率を上げてください。ただし満足度が下がる場合は、解決率より満足度を優先してください」
組にしても、順番を書かないとAIは迷います。迷ったときにどちらを取るかは、人が先に決めておきます。この一文を必ず入れるのが、研修での決まりです。
受講者がつまずきやすい点
最初のつまずきは、2つ目の数字を測る方法がないことです。満足度のような数字は、測る仕組みがないと使えません。その場合は、数字を増やす前に、今ある記録から測れるものを探します。
次のつまずきは、2つの数字が同じ向きに動くと思い込むことです。解決率が上がれば満足度も上がると考える人がいます。上がる場合もありますが、そうならない場合を先に考えるのが、この演習の目的です。
組にしたあとの確かめ方
数字の組は、一度決めたら終わりではありません。AIの出した結果を人が見て、2つの数字が両方とも悪くなっていないかを確かめます。
片方だけが動いていたら、もう1つ別の数字を足す合図です。数字を増やしすぎると、人が見きれなくなります。研修では、組は2つか、多くても3つまでと教えます。
毎週どの数字を見るかは、次の記事にまとめています。
研修が「やった気」で終わる理由と、毎週3つの数字で防ぐ方法(新しいタブで開きます)
研修の成果を数字で見るときも、同じ考え方が使えます。
弊社の研修での扱い
Qu の法人向け研修では、受講者の実際の仕事の数字を使ってこの演習をします。ワークショップは1回3時間で、参考価格は税抜30万円からです。自社の数字を持ち寄る形なので、研修のあとにそのまま使えます。
研修の効果を測る別の方法は、次の記事で説明しています。
社員のAIスキルの測り方は研修の前後で同じ課題を解かせる(新しいタブで開きます)
目標の数字は、AIに渡す前に人が組にします。これが、AIに目標を渡す研修で最初に教えることです。