AIに資料やWebページを作らせると、最後に「完璧に仕上がりました」と返ってくることがあります。受講者は、その一言で安心して次へ進みがちです。この記事は、研修でその「完璧です」をどう確かめさせるかに答えます。
答えは、確かめる手順を1つだけ決めさせることです。AIの自己評価だけで仕事を受け取らず、AIに画面を見せて確かめさせる手順を足し、弊社の生成AI研修 Qu では、その手順を受講者自身に決めて書かせます。AIは自分の出来を高く見積もりやすいと考えて、教えるからです。
なぜ「完璧です」を信じないのか
ある記事では、AIは自分の出来を高く見積もりやすいと書かれています。作った本人が採点すると、点が甘くなるのは人も同じです。
たとえばWebページをAIに作らせた場合、書いたコードに間違いが見つからなければ、AIは「完璧です」と答えます。ところが、実際に画面を開くと、文字が重なっていたり、ボタンが隠れていたりします。コードを読むことと、画面を見ることは別の確認だからです。
研修の最初に見せるのは、この食い違いです。「完璧です」と答えたものを開き、崩れている箇所を探してもらいます。自分の目で見つけると、AIの言葉をそのまま受け取るのは危ないと実感できます。
確かめ方は3つに分けて見せる
確かめ方は、1つではありません。研修では、次の3つを並べて見せます。
| 確かめ方 | 誰が見るか | 分かること | 弱い点 |
|---|---|---|---|
| AIの自己評価を読む | AI | AIがどう思っているか | 出来を高く見積もりやすい |
| AIに画面を見せて確かめさせる | AI | 見た目の崩れ、抜けている項目 | 人が見るより見落としがある |
| 人が画面を開いて見る | 人 | 会社として出してよいかの判断 | 毎回やると時間がかかる |
受講者には、どれが正しいかではなく、仕事の重さで選ぶものだと伝えます。社内で使うメモなら、AIに画面を見せる手順で足りるかもしれませんが、お客様に出す資料なら、人が画面を開く手順を足します。
この表は、研修の場で一度書かせるとよいものです。自分の仕事に当てはめて、どの行を選ぶかを書いてもらいます。
画面を見せる手順は、こう教える
AIに画面を見せるとは、画面を撮った画像(スクリーンショット)を渡して、見え方を確かめさせることです。研修では、次の順に練習します。
- AIに作らせたものを、実際に画面で開く
- その画面のスクリーンショットを撮る
- 画像をAIに渡し、「依頼した内容と見比べて、ずれている所を挙げて」と頼む
- 挙がったずれを、受講者が自分の目でも確かめる
ここで大事なのは4番目です。AIが「ずれはありません」と答えたときも、受講者が画面を見ます。画像を渡しても、AIが見落とすことはあるからです。
頼み方も練習させます。「問題ないですか」と聞くと、AIは「問題ありません」と返しがちです。「ずれている所を3つ挙げて」と頼むと、探す方向に動きます。聞き方で答えが変わることも、研修で体験できます。
手順を決める理由を先に話す
手順だけを教えると、受講者は面倒に感じて、やがて飛ばします。そこで、会社に確かめる手順が要る理由を先に話します。理由は2つです。1つは、AIの「完璧です」を信じて出した資料に崩れがあれば、責任を負うのは出した人と会社だからです。AIは責任を取れません。もう1つは、手順を決めておくと、人によって確かめ方が変わらないからです。ある人は丁寧に見て、別の人は何も見ない状態では、仕上がりに差が出ます。
この話は、研修の最初に5分ほど使って伝えると、そのあとの練習に身が入ります。
弊社の研修での扱い
弊社の1on1型短期集中研修は、5名までで、専属講師が1対1で見る形です。期間は2か月で、全プランにオリジナルカリキュラム Qu-bis が付きます。1対1の形では、受講者が頼んだ結果の画面を、講師と並んで見ながら確かめる練習ができます。人数が多いワークショップでは、同じ練習を全員でそろえて行う形です。どちらの形でも、確かめる手順を自分の言葉で書いてもらう点は変えません。
なお、確かめる手順の細かい決まり方は、会社によって違います。たとえば、画面を見せる作業にかけてよい時間や、公開前に誰が承認するかは、決める前に社内で話し合う点です。弊社も、先に決めきるのではなく、受講者の仕事を見てから一緒に決めます。
AIの答えの確かめ方を扱う関連記事は2本です。指示の練習とは別に確かめる力を練習させる考え方は、AIの答えを確かめる力は、指示の練習とは別に研修で練習させる(新しいタブで開きます)にまとめています。出す前に人が見る点は、AIが作った資料は、出す前に人が見る点を4つ決めて研修で教える(新しいタブで開きます)で説明しています。
明日できる次の一手
研修を設計する人が明日できることは、1つです。自社で最近AIに作らせたものを1つ選び、「完璧です」と答えた画面を実際に開いて、ずれを1つ探してください。見つかったら、それが研修で見せる最初の例になります。見つからなければ、その仕事は、AIの自己評価に近い確かめ方で足りるかもしれません。
そのうえで、確かめる手順は、たとえば「AIが完璧と答えたら、画面の画像を渡してずれを3つ挙げさせ、自分でも画面を開く」のように、動作で1行に書きます。この1行を、研修の資料の最初に置きます。
以上は2026年10月時点の考え方です。AIが画面を読める範囲は変わるので、手順は定期的に見直してください。