新しい目標を決める会議で、数字から話が始まって困ったことはないでしょうか。研修の受講者に「目標を立ててください」と言うと、売上や件数の数字を先に書く人が多くいます。この記事は、その前に紙へ書かせる3つの問いを、研修でどう教えるかに答えます。
結論から言うと、目標の数字を決める前に「確かめたいこと」「前進の状態」「観察すること」を紙に1行ずつ書かせ、その紙を見ながら話す練習を、研修の中に入れます。弊社の生成AI研修 Qu では、この練習を1回の演習として組みます。2026年10月時点の考え方です。
3つの問いを紙に書かせる
書かせる問いは次の3つです。ある記事では、筆者がこの順に考えるようになったと書いています。
| 問い | 受講者が書くこと |
|---|---|
| 確かめたいこと | 今回の取り組みで、何が分かればよいか |
| 前進の状態 | どの状態になれば、前に進んだと言えるか |
| 観察すること | 何を見れば、次に置く数字が決められるか |
3つとも、数字を書く欄ではありません。数字は、この3つに答えたあとで置きます。順番を守ることが、この演習の中心です。
なぜ数字を最後に置くのか
前例も、比べる実績もない取り組みでは、先に置いた数字の根拠が書いた人の見込みだけになります。見込みだけの数字は、会議で「なぜその数字か」と聞かれても説明できません。
達成できなかったときも困ります。数字を外した理由が、見込みが甘かったからなのか、やり方が悪かったからなのか、区別がつかないからです。確かめたいことが先に書いてあれば、外れたあとに何を見直すかが決まります。
会社にとってこの順番が要る理由は、目標の数字が会議の中で変えにくくなるからです。いったん決めた数字は、人事評価や予算の話に結びつきます。後から根拠を問われる前に、根拠となる問いを残しておく必要があります。
研修での進め方
演習は30分ほどで組めます。受講者には、自分の仕事から、これから始める取り組みを1つだけ選んでもらいます。たとえば「社内の問い合わせをAIで一次回答させる」といった題材で、これは説明のための作り話です。
- 題材を1つ選び、1行で書く
- 「確かめたいこと」を1行で書く。「問い合わせの何割をAIが答えられるか」のように、問いの形にする
- 「前進の状態」を書く。「担当者が、確認せずに使える回答の種類が分かった」のように、状態で書く
- 「観察すること」を書く。見る場所と見る頻度まで書く
- 隣の人と紙を交換し、「この紙から、次に置く数字は決まりますか」と聞き合う
5番目が大切です。紙を人に見せると、「確かめたいこと」の欄にやり方が書いてあることに気づきます。やり方は、確かめたいことの答えを出すための手段です。そこで、講師はやり方の言葉を見つけたら、「それをやった結果、誰の何が変わりますか」と返します。
1つのチームで試す
ここまでの整理は、ある記事の筆者が自分の経験から作ったものです。数字を最後に置くという考えも、一人の経験にもとづきます。別の会社でも同じようにいくかどうかは、まだ確かめられていません。
そのため、研修で教えるときも、全社で一度に使わせません。まず1つのチームで試し、紙に書いた3つが次の数字を決めるのに役立ったかを見て、役立った点と役立たなかった点を集めてから、他のチームに広げます。
弊社の1社毎週定例は、週1回の全体ミーティングを2か月続ける形です。毎週同じ場があるので、1週目に紙を書き、翌週に「観察すること」を見た結果を持ち寄れます。1回きりの研修より、この確かめ方に向いています。詳しくは 研修が「やった気」で終わる理由と、毎週3つの数字で防ぐ方法(新しいタブで開きます) にも書きました。
明日できる次の一手
明日は、自分のチームが今月始める取り組みを1つ選び、白い紙に、数字の欄を作らず3つの問いだけを書いてください。書いた紙を、同じチームの人に1枚見せて、「この紙から、次の数字は決まりますか」と聞きます。
答えが「決まらない」なら、その紙はやり方から書き始めています。何を確かめたいのかを書き直してください。研修の前に、こうして自分で一度試しておくと、受講者の紙のどこでつまずくかが先に分かります。研修の準備の考え方は 生成AIワークショップを社内で開く準備は、終わりの姿を1文で決めることから(新しいタブで開きます) にまとめています。