研修で「項目に重みをつけましょう」と言うと、受講者の手が止まります。何を基準に数を置けばよいのか分からないからです。出てきた表を見ても、なぜその数なのかを誰も説明できないことがあります。この記事では、重みを書くときの4つの決まりを、研修でどう教えるかを説明します。
4つの決まりを先に渡す
重みの書き方には、守る決まりが4つあります。合計を100%にすること。1つの項目は最大50%を目安にすること。各項目に根拠を1行で書くこと。前提条件を明記することです。研修では、この4つを最初に配り、どれも「あとから理由を説明できるようにするため」にあると伝えます。
重みとは、比べる項目のうち、どれをどれだけ大事に見るかを表す数のことです。ここを感覚で決めると、偏りが出ます。声の大きい人の好みが、そのまま表に入ってしまうからです。決まりを守れば、偏りが抑えられ、後から見た人も判断をたどれます。
4つを表で見せる
受講者には、次の表を1枚で見せます。決まりごとに、研修で何を練習させるかを並べています。
| 決まり | なぜ要るか | 研修での練習 |
|---|---|---|
| 合計を100%にする | 全体の中での優先順位が見える | 合計が120%の表を直させる |
| 最大50%を目安にする | 1項目だけで結論が決まるのを防ぐ | 70%の項目を分けるか見直す |
| 根拠を1行で書く | 後から理由を説明できる | 根拠の空欄を埋めさせる |
| 前提条件を明記する | 重みは前提で変わる | 表の上に前提を書かせる |
この表は説明用ではなく、練習の順番でもあります。上から順に、1つずつ直させます。
直す練習で教える
決まりを読み上げても、身につきません。そこで、わざと決まりを破った表を渡して、直してもらいます。たとえば、重みが速さ70%、費用20%、使いやすさ30%という作り話の表です。合計が120%で、速さが50%を超えています。根拠の行も、前提の行もありません。
受講者には、次の順で直させます。
- 合計を数えて、100%になるように配り直す
- 50%を超える項目があれば、2つに分けられないかを話し合う
- 各項目の横に、根拠を1行で書く
- 表の上に、期限や体制などの前提を書く
直し終わったら、隣の人に表を見せます。見せる側は、決まりを4つとも守れたかを自分で言い、見る側は、根拠の行を声に出して読みます。根拠の行を読んで、「なぜ速さが多いのか」が答えられれば合格です。答えられなければ、根拠の書き方が足りません。
根拠の1行を書かせる
4つの中で一番つまずくのは、根拠の1行です。「大事だから」と書く人が多いためです。これでは、あとから見た人に理由が伝わりません。
研修では、根拠に「前提」を入れる型を教えます。書き方は、「来月に公開する予定で、運用する人が2人なので、速さを30%にする」のようなものです。期限と体制が入ると、読む人が自分で納得できます。弊社の法人向けワークショップは1回3時間です。この時間の中でも、根拠の1行を書く練習には時間を多めに取るのがよいと考えています。1行を書くのに手間がかかるのは、前提を思い出す作業が含まれるからです。
前提を先に書く習慣は、AIに出す許可を紙1枚で決める(新しいタブで開きます)練習とも同じ形です。先に前提を紙に書いてから、数や許可を決めます。
50%の目安の扱い
50%という数は、守らないと失格になる線ではなく、目安です。研修では、超えたときに「本当にその項目だけで決めてよいか」を話し合うきっかけとして教えます。必ず外せない条件がある場合は、重みをつける前に、足切りとして別に扱う方が分かりやすくなります。
会社に要る理由
なぜ、会社の研修で重みの書き方を教えるのでしょうか。理由は、担当が替わっても、決めた理由が残るからです。
重みの数だけが残った表は、後から見ると、なぜその配分なのかが分かりません。見直したいときも、どこから直せばよいのか迷います。根拠と前提が書いてあれば、前提が変わった項目だけを直せますし、決めた人が異動しても、会社として判断を引き継げます。
2026年10月時点の弊社の考えでは、この習慣は、AIに案を比べさせる場面でも役に立ちます。AIは比較表を作れますが、どの条件にどれだけ重みを置くかは、人が決める仕事だからです。その理由を書き残す形が、4つの決まりです。
明日の一手
研修の担当者が明日できることは1つです。過去に会社で作った比較表を1枚選び、4つの決まりに照らして、守れていない所に印をつけてください。印がついた表は、そのまま研修の練習問題に使えます。作り話の表を用意する手間が、省けます。
印をつけるときは、社名や金額などの伏せたい情報を消してから配ります。表の形だけが残れば、練習には十分です。