研修のあとで、AIを使って仕事が楽になった社員は何人か出てきます。ところが、その例を知っているのは本人と隣の席の人だけで、ほかの部署には届きません。この記事は、AIでうまくいった例を全員の前で紹介する場を、研修でどう教えるかに答えます。
答えは、紹介する人、話す長さ、話す順番の3つを研修の中で先に決めて教えることです。上手な人に自由に話してもらうだけでは、聞いた人が真似できません。弊社の法人向けプランのうち「1社毎週定例」は、週1回の全体ミーティングを2か月続ける形です。この毎週の場の最初の数分を、事例の紹介に使う進め方を勧めています(2026年10月時点)。
紹介の場が必要な理由
AIを使わなくても、今の仕事は進みます。だから「AIを使いましょう」と呼びかけるだけでは、多くの社員は動きません。
ある会社の例では、AIを活用した人を表彰したり、役職の高い人から「すごい」と言ってもらったりしました。ほめられる場があると、ほかの人も「やってみよう」と思いやすくなります。
ここから分かるのは、紹介の場の役目が自慢ではないことです。身近な人がやった例を見ると、自分の仕事でもできそうだと感じられます。研修では、この役目を最初に受講者へ伝えます。
また、会社にとっても理由があります。うまくいった使い方が個人の中に留まると、同じ失敗を別の人がまた繰り返しますが、例を全員で共有すれば、確かめ方や頼み方の工夫が会社の中に残ります。
話す人の決め方
話す人は、一番成果が大きい人でなくてかまいません。自分の仕事に近い例を話せる人のほうが、聞く人の役に立ちます。
研修では、次の順に決めると教えます。
- 研修の課題や普段の仕事で、AIを使った人を見つける
- 本人に「全員の前で3分話してもらえますか」と、1対1で先に聞く
- 断られたら、理由を聞かずに別の人にお願いする
全員の前で話すのは、人によって負担です。いきなり名前を呼ぶと次から例を出してくれなくなるので、先に本人へ聞くことを研修で必ず教えます。聞くときは、話す内容をどこまで出してよいかも一緒に確かめます。
3分で話す型
話が長くなると、聞く人は何を持ち帰ればよいか分からなくなります。そこで、話す内容を4つの項目にそろえます。
| 項目 | 話す内容 | 例文 |
|---|---|---|
| 仕事 | 何の仕事に使ったか | 来週の会議の議事録を整えた |
| 頼み方 | AIに何と頼んだか | 決まったことだけを先に並べてと頼んだ |
| 直した所 | 人が直した所 | 担当者の名前が違っていたので直した |
| 次にやること | 同じ仕事で次に試すこと | 期限の書き方も指定してみる |
「直した所」を必ず入れるのが大事です。直した所を話せば、AIの答えをそのまま使わず確かめた人だと伝わります。聞く人も、確かめる習慣を真似できます。
聞く人への教え方
紹介の場では、聞く側にも役目があります。「すごいですね」と言うだけでは、次の人に何も残りません。
研修では、聞いたあとに次の2つを言う練習をします。1つ目は、自分の仕事ならどこで使えそうか。2つ目は、話した人に聞いてみたいことです。この2つがあると、紹介が一方的な発表で終わらず、会話になります。
また、AIが苦手だった所も一緒に話してよいと伝えます。うまくいかなかった部分を聞くと、期待しすぎて落胆することを防げます。
避けたいこと
紹介を成績の競争にしないでください。順位をつけると、控えめな人は例を出さなくなります。
画面を映すときは、入れてはいけない情報が映っていないかを、話す前に本人と一緒に確かめます。お客様の名前や社内の数字が見えると、紹介の場そのものが問題になります。
これらは、研修の最初に「紹介の場の約束事」として紙1枚にして配ると、運営する側も迷いません。毎週の振り返りの考え方は研修が「やった気」で終わる理由と、毎週3つの数字で防ぐ方法(新しいタブで開きます)にまとめています。60分で成果物が残る題材は生成AIワークショップのネタ10選(新しいタブで開きます)が参考になります。
明日できる最初の一手
明日やることは1つです。今週の定例ミーティングの前に、AIで助かった人を1人見つけ、「次の定例の最初に3分だけ話してもらえますか」と声をかけてください。
その人が受けてくれたら、上の表の4項目を紙に書いて渡します。最初の1回は、うまく話せなくても問題ありません。全員の前で例が1つ出ることで、次に話す人が出やすくなります。