目標に「新しい仕組みを入れる」と書いて、会議が終わる。半年後、仕組みは入ったのに、誰の仕事がどう変わったのかを説明できない。研修の場でも、この場面は何度も目にします。この記事は、その目標を書き換える方法を、研修でどう教えるかに答えます。
答えは、目標の文を「その結果、誰にどんな変化が起きるか」の形に書き直す練習をさせることです。仕組みを入れることは、目的ではなく手段だからです。手段のまま目標にすると、入れた時点で達成になってしまいます。人の仕事が変わったかどうかは、誰も確かめません。
なぜ書き換えが会社に要るのか
目標は、あとで成果を見るときの物差しです。その物差しが「仕組みを入れたか」だと、入れた日に評価が終わります。使われているか、困りごとが減ったかは、評価の外に出ます。
もう1つ理由があります。仕組みの名前だけが書かれた目標では、現場の人が自分に関係あるかどうかを判断できません。「誰の何が変わるか」が書いてあれば、関係する人が早く気づき、準備や反対意見を出せます。
ある記事では、実装物を目標に書いたときの書き換え方として、この問いを勧めていました。仕組みを入れた結果、誰にどんな変化が起きるか、という問いです。
研修で最初に見せる書き換えの例
研修では、まず短い例を並べて見せます。次の表は、たとえばの作り話です。
| 元の目標 | 書き換えた目標 |
|---|---|
| 問い合わせ管理ツールを導入する | 問い合わせを受ける事務の人が、同じ質問に何度も答えずに済むようにする |
| 社内の文書検索AIを入れる | 新しく入った人が、先輩に聞かずに手順書を自分で見つけられるようにする |
| 勤怠システムを新しくする | 月末に勤怠を集計する人が、修正の連絡を追いかけなくてよい状態にする |
右の列には、必ず人が出てきて、その人の仕事で何が変わるかも書いてあります。受講者には「主語が仕組みから人に変わった」ことに気づいてもらいます。
書き換えの手順
研修では、受講者に自分の部署の目標を1つ持ち込んでもらい、次の順で書き換えます。1人で3分ほどあれば進められます。
- 目標の文で、仕組みや道具を指す言葉に線を引く
- その仕組みが入ったあと、毎日それを使う人を1人決める
- その人の仕事で、何が減り、何が増えるかを1文で書く
- 変わったかどうかを、何を見て判断するか書く
4つ目が抜けやすい点です。「楽になる」と書くだけでは、あとで確かめられません。たとえば「同じ質問への返信が、週のはじめに溜まらなくなる」のように、見れば分かる形にします。
つまずきやすい書き換え
受講者がよく書くのが、「全社員が新しいツールを使えるようになる」という文です。人が主語なので書き換え済みに見えます。けれども中身は、仕組みを入れることの言い換えです。使えるようになった先で、仕事がどう変わるかが書いてありません。
こうした文には、講師が次の問いを返します。
- 使えるようになったら、その人の何が変わるのか
- 変わったことは、何を見れば分かるのか
答えられなければ、まだ手段の話をしています。受講者同士で目標を読み合い、この2つを聞き合う時間を取ると、自分では気づけない曖昧さが見つかります。
弊社のワークショップでの扱い
弊社の法人向けワークショップは、1回が3時間で、社員全員を対象に開けます。2026年10月時点で、価格は30万円〜(税抜、参考価格)です。この3時間のなかで、受講者が自分の部署の目標を持ち込み、書き換える時間を取れます。
目標づくりは研修のあとに放っておかれやすい場面です。だからこそ、研修の最中に自分の仕事の目標で一度書いておくと、職場に戻ってからも同じ形で書けます。AIの使い方を覚える話と、目標を書く話を分けず、同じ場で扱います。
広げる前に1つのチームで試す
この書き換えの考え方は、ここまで書いてきたように、一人の経験にもとづく整理です。他の会社の目標づくりにそのまま当てはまるかは、分かりません。断定せずに、試して確かめるのが安全です。
そこで、まず1つのチームだけで試します。そのチームの目標を書き換え、半年後に「書き換えた形のほうが、変化を確かめやすかったか」を見ます。うまくいけば次のチームへ広げ、うまくいかなければ、どこが合わなかったかを書き残して形を直す、という順です。
明日できる次の一手
明日、手元にある目標を1つ選んでください。「〜を導入する」「〜を整備する」と書いてあるものがよいです。上の4つの手順で、使う人を1人決め、その人の仕事の変化を1文で書きます。
目標を書くときに複数の数字を組にする考え方は、AIに渡す目標は数字を1つにせず組にする。研修での教え方と手順(新しいタブで開きます)にまとめています。書き換えた目標に数字を添えたくなったら、あわせて読んでください。