部署の間で予算を取り合ったり、急なトラブルで一刻を争ったりする場面があります。そのとき最後に誰が決めるのかが決まっていないと、話し合いが長引いて仕事が止まります。この記事の話題は、その決め手を平常時に決めておく方法と、研修での教え方です。
答えは、決める人を役職で紙1枚に書かせ、架空の場面で一度使わせることです。話し合いが得意な組織でも、決め方を決めていなければ割れます。利害がぶつかったときは、決める人を決める話し合いから始まります。緊急時の決め方と、責任を誰が引き受けるかも同じです。研修では、この3点を平常時に書き出す時間を取ります。
平常時に決める理由
もめている最中に決め手を決めようとすると、立場が強い人に有利な方法が選ばれやすくなります。声の大きい人が通りやすくなる、ということです。どちらの側も納得しにくく、決まったあとも不満が残ります。平常時なら、誰も具体的な争いの当事者ではないので、公平な方法を選びやすくなります。
緊急時は理由が別です。時間が足りず、集まって相談する余裕がありません。決める人が決まっていれば、その人がすぐ判断できます。決まっていなければ、全員が他の人の判断を待ちます。
ある連載では、仕事と注目が急に増えた時期に、社内の対立が表に出たと書かれています。忙しくなると、決め方の抜けが表に出やすいということです。研修では、忙しくなる前に紙へ書く意味を、この点から説明します。
紙1枚に書く項目
研修で書かせる紙は1枚で足ります。項目は4つに絞り、役職で書いて、担当者の名前を添えさせます。人が替わっても紙が使えるようにするためです。たとえば次のように書きます。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 場面 | 2つの部署が同じ予算を求めたとき |
| 決める人 | 経営会議の議長 |
| 不在のとき | 副議長が代わりに決める |
| 責任 | 決めた人が全社に理由を説明する |
もめたときの決め手と、緊急時の決め手は、別の紙に分けて書かせます。もめたときに大切なのは、関係者が納得できる手順です。緊急時に大切なのは、迷わず決められる速さです。目的が違うので、同じ人でも決め方は変わります。
研修の進め方
弊社ストリックランドの Qu には、法人向けの「1社毎週定例」というプランがあります。2026年10月時点で、週1回の全体ミーティングを2か月続ける形です。毎週の会議のうち1回を、この紙を書く回に当てられます。進め方は次のとおりです。
- 最近もめた場面と、急ぎだった場面を、参加者が1つずつ思い出す。
- その場面で、実際に誰が決めたかを紙に書く。
- 本来は誰が決めるべきだったかを、役職で書く。
- 答えが割れた場面は、割れた理由を全員で話す。
- 架空の場面を1つ出し、紙のとおりに決める練習をする。
大事なのは、4の答えが割れる場面です。ある人は部長が決めると思い、別の人は社長が決めると思っていたとします。それ自体が、決め手が決まっていない証拠です。誰かの誤解として責めず、紙に書けば解消することを見せます。
責任と見直し
決める人には、その結果の責任を引き受けることまで書かせます。決める力があっても責任を引き受けられない人を決め手にすると、決めたあとに誰も説明しません。不満だけが残ります。逆に責任だけ負って決められない人も、同じ問題を生みます。決める人と責任を負う人が同じかどうかは、必ず確かめる点です。
担当者が替わったときは、紙を読み直す機会にします。役職が変わらなくても、人が替われば判断の癖が変わるからです。AIに任せる範囲を広げる場面でも、考え方は同じです。任せる範囲を広げる前に確かめる人と場所を決める(新しいタブで開きます)記事で扱っています。決める人を紙に残す形は、仕事を渡す書式を決める(新しいタブで開きます)記事ともつながります。
明日できる次の一手
次の定例会議の最初の5分を使います。問いは「2つの部署の意見がぶつかったとき、最後に決めるのは誰か」です。全員にその場で紙へ書いてもらってください。見せ合って答えがそろえば、すでに共有されている決め手です。割れたら、それがこの会社の決め手の空白です。
その場で結論は出さず、責任者に決めてもらう日だけを決めて終わります。会議を荒立てずに、研修で扱う内容の最初の部分を職場で試せます。
書いてもらう紙は、名前を書かない無記名にしても構いません。無記名なら、立場を気にせず本音の答えが出ます。出てきた答えを並べて見るだけで、社内の認識がどこで割れているかが分かります。そこから紙1枚の作成に進む流れは、研修と同じ順番です。