このレッスンでは、文章を返さないAIがあることを知り、自部門のどの作業がその対象かを見つけます。
ゴール「文章は要らず、どちらかを決めてほしいだけ」の作業を、自分の業務から1つ選べるようになることです。
生成AIに分類や点数付けをさせると、答えの言い回しが毎回ゆれて、後ろの処理が受け取れないことがあります。本コースでは、その工程を判断だけのモデルに移します。
返るのは文章ではなく、形の決まった値だ
このモデルは文章を1文字も返しません。 返るのは、選択肢のどれか・段階・はいである確率の3つだけです(出典1、2)。
理由は、答えの形を先に決めてから聞く仕組みになっているからです。文章を書くAIは答えを自由に作れるので、こちらが望む形に収める工夫が要ります。
| 比べる点 | 文章を書くAI | 判断だけのモデル |
|---|---|---|
| 渡すもの | 会話のやりとり | 材料と、型を決めた質問 |
| 返るもの | 文章 | 選択肢・段階・確率 |
| 受け取る側の手間 | 文章から値を読み取る | 返った値をそのまま条件に使う |

答えの形が崩れないので、後ろの処理が単純になります。 「高」と書いてほしい場面で「高い」「緊急度は高です」と返ってくることがありません。
自分の業務で、AIの答えから値を探して取り出している処理があれば、それが置き換えの候補です。
材料をまとめて渡し、決めた質問にだけ答えさせる
渡すのは会話ではなく「状態」です(出典2、3)。状態とは、判断の材料になる情報の束のことです。
問い合わせの本文、申請の内容、投稿の下書きのように、手元にあるものをまとめて渡します。モデルはその状態に対して、こちらが立てた質問にだけ答えます。
状態: { "本文": "納期の件で確認したいことがあります…" }
質問: { "担当部署": 経理・技術・営業・その他 のどれか }
答え: 技術 0.71 / 営業 0.22 / 経理 0.05 / その他 0.02
1回の問い合わせに質問を何個でも入れられます。 質問どうしは互いに影響せず、それぞれに答えが返ります(出典3)。
まず、いま人が目で見て振り分けている作業を思い浮かべてください。その人が見ている材料が、そのまま状態になります。
答えの形が崩れないことと、中身が正しいことは別だ
「幻覚が無い」という説明には留保が要ります。 開発元が保証しているのは、決めた形の外の答えが返らないことです(出典1)。
The Register は、これは答えの中身が正しいことを意味しないと指摘しています(出典6)。形が正しくても、振り分け先が間違っていることはあります。
| 言い方 | 正しいか |
|---|---|
| 間違えないモデル | 誤り |
| 答えの形が崩れないモデル | 正しい |
上司や情報システム担当に説明するときは、後者で言いましょう。 前者で説明すると、検証なしで自動化してよいと受け取られます。
次のレッスン以降で、間違いを前提にした線の引き方を扱います。
向かない仕事が3つある
このモデルには、はっきり向かない用途があります(出典3)。開発元の資料にも、文字どおりに読むモデルであり、考える処理はさせないよう書かれています。
| 向かない仕事 | 理由 | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 文章を書く | 文章を返さない | 従来のAIか人が書く |
| 計算・件数の集計・日付の比較 | 計算をする仕組みではない | コードで計算する |
| 順を追って考える問い | 一度に答えを出すので段階を踏めない | 小さな質問に割る |
「この問い合わせを分析して最善の対応を決めて」は向きません。「返金の要求が含まれるか」「緊急度はどの段階か」のように割ります。
割れない問いは、まだ人の仕事です。 無理に任せると、形は整った間違いが返ります。
演習
自部門の業務から、「文章は要らず、どちらかを決めてほしいだけ」の作業を3つ書き出し、1つ選んでください。題材は自社のものに置き換えて構いません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作業の名前 | (例)問い合わせメールを担当部署へ振り分ける |
| いま誰がやっているか | (例)総務の当番が朝に目視で |
| 1日あたりの件数 | (例)15件 |
| 判断の材料 | (例)件名と本文の最初の3行 |
| 決める内容 | (例)経理・技術・営業のどれか |
成果物はこの表1枚です。次のレッスンで、この作業を質問の形にします。
やってはいけないこと
- 「幻覚ゼロ」を「間違えない」と読み替えて、社内資料や提案書に書く
- 文章を書かせようとする。このモデルは要約も返信文も返さない
出典
- 出典1: TypeSafe AI Blog「Introducing System One Models & Jev」 https://typesafe.ai/blog/introducing-system-one-models-and-jev(新しいタブで開きます) (確認日 2026-09-18)
- 出典2: TypeSafe AI Docs「Introduction」 https://docs.typesafe.ai/introduction(新しいタブで開きます) (確認日 2026-09-18)
- 出典3: TypeSafe AI Docs「Primitives (Questions)」 https://docs.typesafe.ai/primitives(新しいタブで開きます) (確認日 2026-09-18)
- 出典6: The Register「TypeSafe AI debuts model for machines that plays Doom」 https://www.theregister.com/ai-and-ml/2026/09/16/typesafe-ai-debuts-model-for-machines-that-plays-doom/5296711(新しいタブで開きます) (確認日 2026-09-18)
- 参照した教材: 「新着情報」2026-09-15 Jev、判断だけを返すモデル