社内の問い合わせに答えるAIを入れることになり、研修で何から教えるか迷っている担当者は多いと思います。設定の話から入るべきか、使い方の練習から入るべきか、決めにくいところです。この記事の問いは、最初に決めることを研修でどう教えるかです。
結論から言うと、最初に教えるのは、答えの元になる情報を誰がいつ直すかを決めることです。設定や質問の書き方は、そのあとで十分です。株式会社ストリックランドが運営する生成AI研修のQuでも、法人向けの研修を組むときはこの順を勧めています。
答える仕組みより先に更新を決める
社内の問い合わせに答えるAIは、自社でも作れます。ところが、ある記事では、本当の価値は答える部分にはなく、答えの元になる情報を新しく保ち続ける仕組みにあると整理されており、作るより直し続けるほうが大変だという見方です。
この考え方が会社に要る理由は、社員がAIの答えを信じて動くからです。規定が変わったのに元の文書が古いままだと、AIは古い内容をそのまま答え、聞いた社員は疑わずに古い手順で仕事を進めてしまいます。
だから研修では、AIを動かす練習の前に、情報を直す人を決める時間を取ります。ここを飛ばすと、研修の直後はよく動いても、数か月後に誰も信じない道具になりがちです。
研修で受講者に決めてもらう4つの点
受講者には、次の表を自分の部署の問い合わせに当てはめて書いてもらいます。口頭で話し合うだけにせず、紙に書いて残すのがこつです。
| 決める点 | 研修での問い |
|---|---|
| 直す人 | 答えの元の文書を、名前で言えば誰が直しますか |
| 直すきっかけ | 規定や料金が変わった日に、誰がその担当へ伝えますか |
| 元の置き場 | 同じ内容の文書は、いま何か所にありますか |
| 見直す日 | 直したかどうかを、いつ誰が確かめますか |
「部署みんなで気をつける」と書いた受講者には、名前に直させてください。みんなの仕事は、誰の仕事でもなくなるからです。
また、「元の置き場」の欄は、同じ内容の文書が複数あると1つを直しても別の1つが古いまま残るため、数を数えさせると効果があります。受講者が自分で数えると、直す対象の広さを実感できます。
研修の進め方
時間は90分ほどを目安にします。進め方は次の順です。
- 自分の部署に届く問い合わせを、5件書き出す
- 5件それぞれの答えの元が、どの文書かを書く
- その文書を直す人を、名前で決める
- 規定が変わったときに、その人へ伝える人を決める
- 1か月後の見直しの日を、予定表に入れる
2の段階で、受講者は「答えの元が決まっていない問い合わせ」に気づきます。その気づき自体が、この研修の大きな成果です。無理に埋めず、未定として書かせて構いません。未定の問い合わせは、AIに答えさせる範囲から外しておくのが安全です。
講師は、受講者が書いた名前が実際にその仕事を持てる人かも確かめます。異動や退職の予定がある人を担当にすると、半年後に更新が止まります。担当が替わったときに引き継ぐ先も、あわせて書かせてください。
弊社の研修での見方
弊社の法人向けプランには、週1回の全体ミーティングを2か月続ける1社毎週定例の型があります。毎週集まるので、受講者が決めた担当者と見直しの日が実際に回っているかを、翌週に確かめられ、決めて終わりにならないのがこの型の良いところです。
単発のワークショップで扱う場合は、見直しの日を受講者の予定表に入れるところまでを、その場の宿題にします。内容は2026年10月時点の弊社のプランにもとづいています。
決める前に話し合っておきたい点
更新の担当者の時間を、正式な仕事として認めるかどうかは、会社ごとに違います。費用の上限をどこに置くか、AIの答えの元を直した内容を公開前に誰が承認するかも同じです。ここは研修の中で決めきらず、決める前に上の人と話し合う点として扱ってください。
AIを広げる前に、確かめる人と場所を決める考え方は、任せる範囲を広げる前に確かめる人と場所を決める(新しいタブで開きます)でも説明しています。更新の担当者を決める話と合わせて読むと、研修の組み立てが見えやすくなります。
明日できる次の一手
明日の朝にできることは1つです。部署に届く問い合わせのうち、最近答えが変わったものを1つ選び、その答えの元になる文書がいま何か所にあるかを数えます。
2か所以上あれば、古いほうが残っている可能性があります。どれを正とするかと、直す人の名前を、その場で決めてください。この1件の経験があると、研修で受講者に説明するときも、自分の言葉で話せます。