社員に生成AIを使わせたいのに、どの情報なら入力してよいのか、人事も経営者も答えに詰まる。この悩みを抱える会社は多いと思います。全部禁止にすれば誰も使わず、自由に使わせれば不安が残ります。この記事は、入れてよい情報を研修でどう決め、社員にどう教えるかを説明する内容です。
弊社の研修(Qu)は、入れてよい情報の線引きを、全部禁止か全部許可かの二択にしません(2026年10月時点)。最初に決めるのは守る情報で、次に確かめるのは入力先のAIの契約です。社員が自分で判断できるようになるまで、この順で練習します。
全部禁止にしない理由
全部ダメにすると、社員は安全になったと感じます。しかし実際には、使うかどうかの判断を先送りしているだけです。
- 何を守るかを決めずに怖がるのは、判断ではなく先送りである
- 禁止していても、個人のスマホや無料のアカウントで使う社員はいる
- 会社が見えない場所で使われるので、かえって危ない
- 全部OKにすると、個人情報まで入力される
- 悪気がなくても、顧客の名前が入ったままの文章を貼る人は出る
だから研修では、「入れるか入れないか」ではなく「何を守るために、どこまで入れるか」を教えます。
先に守るものを決める
守る情報は、会社として、研修の冒頭に書き出します。感覚は社員ごとに違うので、全員が同じ紙を見ながら決めます。
- 人を特定できる情報を書き出す
- 顧客や社員の氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど
- 社外に出していない社内の資料を書き出す
- 見積書、契約書、未発表の計画、取引先とのやりとりなど
- 公開されている情報を書き出す
- 自社のサイトに載せた文章、発売済みの製品の説明など
- 書き出した内容を、次の節の区分表に当てはめる
この書き出しは、人事や経営の担当者が事前に用意しておくと、当日の時間が足りなくなりません。社員に白紙から考えさせると、決まらないまま終わります。
入力先の契約を確かめる
同じ情報でも、入力する先によって扱いが変わります。社内の資料を入れてよいかは、使うAIが法人向けの契約かどうかで決まります。
法人向けの契約とは、会社が申し込み、会社の管理者が設定を管理できる契約です。個人が自分で登録したアカウントは含みません。
研修で使う区分は次のとおりです。
| 情報の種類 | 入力の可否 | 研修での扱い |
|---|---|---|
| 個人情報 | 入れない | 氏名を記号に置き換えて頼む練習 |
| 社内の資料 | 法人向けの契約を確かめて入れる | 契約の種類と、入力内容の扱いを決める設定を画面で見せる |
| 公開されている情報 | 入れてよい | 出典を確かめる習慣もあわせて伝える |
個人情報を入れないという決まりに、例外は作りません。要約や文章の直しを頼むときも、氏名や住所は伏せ字にして入力します。伏せ字にしても頼みの内容が通じることは、研修で実際に手を動かして確かめます。
研修の進め方
進行は、話を聞く時間を短くし、自分の仕事の文書を区分に分ける作業を中心にします。
- 会社が決めた区分表を配る
- 表は A4 の1枚に収まる量にする
- 区分表の作り方は漏えい対策の研修記事(新しいタブで開きます)にまとめています
- 各社員が日ごろ扱う文書を、区分に当てはめる
- 迷った文書は、そのまま付箋に書いて集める
- 使うAIが法人向けの契約かどうかを確かめる
- 確かめる場所は、会社が申し込んだ管理画面や契約の書類
- 個人情報を伏せ字に置き換えた文を、実際に入力してみる
- 迷った文書を全員で読み、区分を決める
手順3で契約を確かめるのは、会社の管理者であって、研修の担当者ではありません。当日に管理者が同席できると、その場で答えが出ます。
迷ったときの決め方
区分表を作っても、現場では表にない情報に出会います。そこで、迷ったときの決め方を1つだけ教えます。
- 入れる前に、この情報が外に出たら誰が困るかを考える
- 困る人がいるなら、入れる前に相談先へ聞く
- 相談先は、担当者名か部署名で決めておく
- 「情報システム部に聞く」とだけ決めても、誰も答えないことがある
- 迷った例は、あとから区分表に加える
- 加えたら、全員に伝える
迷った例を集めて表を直すほど、ルールは会社の仕事に合っていきます。表は最初から完璧にならないので、直す前提で配ります。
弊社の研修の場合
弊社が使うAIには、読む権限と下書きを作る権限しか与えていません。投稿のボタンを押すのは人です。口頭の注意だけでは守りきれないことがあるため、AIにできないことは設定で制限しています。入力してよい情報も同じ考え方で、研修の場でも、注意書きの読み上げで済ませず、設定画面を開いて確かめます。
Qu の法人向けワークショップは、1回3時間の単発研修で、全社員が参加できます。参考価格は税抜30万円からです。区分表がまだ無い会社には、先に区分表を一緒に作る進め方もあります。
研修によっては人材開発支援助成金の対象となることがありますが、支給は約束できず、負担額に賃金助成の額は含みません。対象となるのは雇用保険の被保険者です。申請は社会保険労務士に相談してください。